創業に関する基礎知識

Connected Industries  SDGsと連携する目指すべき産業構造

SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、経済産業省はConnected Industries(つながる産業)を提唱しました。日本の産業界が持つ強みと最新のデジタル技術を駆使して、各産業分野のエンパワーメントを図ることが最大の目標です。

今回はConnected Industriesの5本柱となる重点的取組分野と、それぞれの分野をつなぐ3つの横断的政策について解説します。

 

Connected Industriesとは

Connected Industriesとは、2017年に経済産業省が提唱した概念です。最先端技術を活用して人・企業・業種そして国のつながりを強め、新たな価値の創造や社会問題の解決を通してSociety5.0(※)を実現させることが最大の目的です。

Connected Industriesは、以下の5分野に関する取組を推進しています。

 

・自動走行モビリティサービス
・ものづくり・ロボティクス
・バイオ・素材
・プラント・インフラ確保
・スマートライフ

 

これらの分野は製造・開発分野等における日本の優位性および市場成長性、そして社会的意義の大きさによって定められました。それぞれの分野については、次項で詳しく解説します。

Society4.0(情報社会)では、かつて人力に頼っていたさまざまな仕事がデジタル技術によって自動化されました。情報産業の発展によって世界経済が大きく成長したものの、異なる産業どうしのつながりはそれほど強くありませんでした。また必要とする技術・サービスにアクセスできず不便を強いられる人や、情報過多によって混乱する人も現れました。

Connected Industriesにおいては、AIやビッグデータなどを活用してそれまで独立・対立関係にあったものを融合させることが重視されます。新しいビジネスモデルを生み出し国そのものの産業力強化や国民生活の向上に貢献するCIは、SDGs実現の手段としても注目されています。

※Society5.0…経済発展と社会的課題の解決を図るため、人間を中心としつつサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた社会。「超スマート社会」とも呼ばれる。

 

横断的政策

経済産業省は、上記の5分野に加えて3つの横断的政策を発表しました。どの分野にも共通するこれらの政策を通して産業間の結びつきをより強固なものにし、日本の強みであるリアルデータを核として各分野への支援を強めるねらいがあります。

 

リアルデータの共有・利活用

2018年、総務省によって公的データ提供要請制度が制定されました。国等が保有する公的データを革新的産業に活用すること、ならびにデータ利用に関する安全管理基準を満たすと認められた事業者は、公的データの提供要請が可能になります。

またリアルデータ(※)を持つ大企業とAIベンチャーの連携を支援するAIシステム共同開発支援事業も、重要な取組のひとつです。このほかにも、実証事業を通じたモデル構築やルール整備などの検討が進められています。

※リアルデータ…ネット空間ではない実世界における個人・企業の活動状況等について、センサー等を通して集められるデータ

 

データ活用に向けた基盤整備(研究開発、人材育成、サイバーセキュリティ)

IoTの普及にともなってサイバーセキュリティ対策の重要性が注目されているものの、分野が変われば具体的な対策方法も変わります。そのため、各分野や現場の状況に合わせた対策強化が求められます。

どのような技術開発も、人材がいなければ進められません。今後は、AI開発はもちろんインターネットとリアルな世界の両方に精通したハイブリッド人材の育成が重視されます。また、国内外から優秀な人材を集める枠組みづくりも大きな課題です。

 

さらなる展開(国際、ベンチャー、地域・中小企業)

世界各国との協力ならびに国際連携WG(ワーキンググループ)を通じたシステム輸出に注力し、国際標準化人材の質的・量的拡充を図ることで、さらなる国際的発展を目指します。

また日本版ベンチャーエコシステム(※)実現に向けた取組や、専門家育成・派遣等による地域・中小企業への支援活動を推進します。

※ベンチャーエコシステム…ベンチャー企業が育ちやすい社会基盤づくりによって、社会全体の経済活動・経済発展が促される社会

 

自動走行・モビリティサービス

国内外の自動車関連事業者は、2020年頃までに無人自動走行技術を用いた移動サービスの実現を目指しています。これにより交通事故・渋滞の削減や高齢者等の移動支援、環境負荷の軽減等が期待できます。また、日本の自動運転技術が発展することで自動車関連産業の国際競争力を高められるでしょう。

自動走行・モビリティサービス分野では、以下のビジョン実現に向けて自動運転・運転支援技術等の開発を進めています。

 

・交通事故削減
・渋滞の解消・緩和
・環境負荷低減
・分散型エネルギーマネジメントシステムの構築
・物流・移動サービスの拡大

 

推進主体と具体的な取組

自動走行・モビリティサービス分野の推進主体となる自動走行ビジネス検討会は、経済産業省と国土交通省によって2015年に設置されました。自動走行分野において世界をリードし、社会課題の解決に貢献することが活動目的となります。

検討会では、2018年度に産学官連携によって戦略的に取り組むべき内容として以下の6つを定めました。

・レベル4(遠隔操作無し)の自動運転実現に向けた取組
・協調領域の進捗確認(地図データ整備、自動運転の社会実装に必要な環境整備等)
・安全性評価環境づくり
・人材戦略の取組
・実証プロジェクトの推進
・国際的なルール(基準、標準)設定

 

ものづくり・ロボティクス

機械系の製造を得意とする日本には、グローバルな競争力を持つ企業が少なくありません。しかし、ただ製品をつくるだけではいずれ海外の企業に追い抜かれてしまうでしょう。また、少子高齢化による現場の人手不足も懸念されています。

現在、主要国ではIoTやロボットを用いて製造現場の生産性を上げる「スマート製造」が進んでいます。今後日本のものづくり分野が新たな価値を獲得するためには、技術力・現場力を発揮しつつ人間本位の考えに基づいて社会や顧客の課題を解決する「ソリューション志向」が鍵となるでしょう。

ものづくり・ロボティクス分野において目指すビジョンは、以下の通りです。

・生産の全体最適(※)
・止まらない工場
・事故や環境負荷の低減

※全体最適…組織運営において、組織が抱えるすべてのシステムが最適化されること

 

推進主体と具体的な取組

経済産業省の「スマートものづくり応援隊事業(※)」や全国各地のさまざまな取組によって、IoTやロボットを活用した中堅・中小企業の生産性向上支援が進められています。

こうした取組や技術ノウハウを広く共有しつつものづくり人材の交流の場を設けるため、同省は2019年にロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)と共同で「スマートものづくり応援機関全国フォーラム」を開催しました。

※スマートものづくり応援隊事業…製造・IoT・ロボット分野のベテラン人材等を指導者として育成し、彼らを中堅・終章企業の現場に派遣して生産性向上・新規事業開拓を促す事業

 

バイオ・素材

ゲノム編集・合成生物学などのバイオ分野において、コストに見合った価値のある製品や革新的素材を提供できている国は現時点でほとんどありません。

バイオ分野の基盤技術において日本は欧米にやや後れを取っているものの、優れた摺合せ技術(※)や安心・安全な製品提供といった強みを活かしつつリアルワールドデータ(※)を活用することでバイオ・イノベーションの実現に近づけるでしょう。

2018年現在、バイオ・素材分野で掲げられているビジョンは以下の通りです。

・材料や医療・創薬の革新
・エネルギー資源対策
・社会変革を実現する革新的素材の創出

※摺合せ技術…製品の性能を最大限に高めるため、部品・材料の微調整をおこなう技術
※リアルワールドデータ…臨床現場から得られる、電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)等のデータ。患者の個人情報等を守るため、匿名化されている。

 

推進主体と具体的な取組

2018年に実施された「Connected Industries」第4回大臣懇談会において、バイオ分科会
(COCN)は3種類の提言要旨を発表しました。

・バイオ関連データをビッグデータ化・データベース統合し、民間企業による利活用を促進
・生物の機能を活用したものづくり(再生可能原料を用いる化学品事業等のクラスター化)を通して、持続可能な成長社会を実現
・「食」領域の新システム開発(まだ病気に至らない軽度不調マーカーの特定・センシング技術開発等)により、シックケア(病気を治す)からヘルスケア(健康を保つ)へ移行

これらの実現によって健康増進・循環型社会を実現させるべく、分科会は日本のバイオ戦略を世界に発信する必要性を強調しています。

 

プラント・インフラ保安

プラント・インフラ保安は、おもに発電所や石油化学工場等に関連する分野です。同分野では、インフラ老朽化・安全対策や需要拡大等に向けて以下のビジョンを掲げています。

・プラント(工場設備)における生産性・安全性の向上
・自主保安力向上と「稼ぐ力」創出
・センサー・ドローン等の効果的活用

プラントの保安力や利便性向上に大きく貢献するとして注目されているのが、ドローンの活用です。一部のプラントや都市インフラ網では、すでにドローンによる日常点検を実施しています。点検にかかる手間を減らしつつ、ドローン撮影画像をAIで解析して重大事故を防いでいます。

 

推進主体と具体的な取組

2019年のプラントデータ活用等促進会議において、プラント・インフラ保安分科会が発表したおもな取組内容は以下の通りです。

・プラント内でのドローン活用に向けた安全性調査およびガイドライン策定
・防爆エリア(※)の設定に関するガイドライン策定
・より安全かつ効率的な保安管理に向けたTBM(※)からCBM(※)への移行

※防爆エリア…爆発・火災等を防ぐため、センサー・タブレット等の電子機器を使えないエリア
※TBM…Time Based Maintenance(一定周期ごとに設備を整備する方式)
※CBM…Condition Based Maintenance(設備の状態を連続的・定期的に監視し、設備の状況を見て整備時期を決める方式)

 

スマートライフ

スマートライフ分野における最大の目標は、スマートライフ市場を活用して人手不足等の社会課題を解決し働き手(労働時間)を創出することです。家電・ウェアラブル端末などの機器やWebサービスを通して得られるさまざまなライフデータを組み合わせ、生活を便利にするサービスの提供を目指します。

家事・子育て・介護等の家庭内無償労働にかかる負担が軽減され、健康な高齢者が増えれば、多くの女性や高齢者が有償労働に携わりやすくなるでしょう。また、社会保障費の維持にも役立つと期待できます。

 

推進主体と具体的な取組

スマートライフ市場をつくるためにはまず社会課題を把握し、それを解決するためにどのようなサービスやライフデータが必要かを検討する必要があります。

2017年度に実施されたスマートライフ実証事業では、約60世帯を対象にパソコン・スマホ等でさまざまな機器を操作しサービスを利用できる環境を構築しました。その結果、今後より深く検討すべき課題として以下のような内容が挙げられています。

・実サービスとの連携によるデータの有用性評価、信憑性確保
・ライフデータの取得方法(誰が・どこで・どのようにログを取るか)に関する責任の所在の検討
・プライバシーデータの扱い方
・多言語化にともなって生じる海外規制等への対応 他

 

Connected Industriesが目指すもの

Connected Industriesは、重点的に取り組むべき5分野として「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」を挙げています。

これらの5分野は完全に独立したものではなく、共有データや複数の分野に精通したハイブリッド人材等によってつながっています。ある分野の発展が他の分野の発展にも役立ち、お互いに刺激しあうことで日本の産業界全体が大きく進歩するでしょう。

 

【参考】
経済産業省
「Connected Industries」
「AIシステム共同開発支援事業の採択事業者が決定しました」
「バイオとデジタルの融合がもたらすバイオエコノミーの創造」
「Connected Industries プラント・インフラ保安分科会の取組状況」
「スマートライフ政策について」
自動走行ビジネス検討会 「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」Version3.0<要旨>
日本経済再生本部「ロボット新戦略」
総務省「公的データ提供要請制度を活用できるデータ共有事業を初めて認定しました」

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