確定申告とは? 個人事業主は提出必須の所得申告

副業から本格的に起業を検討している会社員の方にとって、個人事業を始めるうえで大きな壁になりがちなのが「確定申告」です。とくに初めての場合は、「申告書ってどうやって書くの?」「必要な書類は?」「還付金(かんぷきん)がもらえるケースって?」など、わからないことも多いでしょう。

本記事では、これから個人事業を始めて副業起業をしようと考えている30代前後のビジネス初心者向けに、個人事業の確定申告に関する基本から具体的な手順、よくある失敗例や成功のポイントまでをわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧いただき、申告作業の第一歩を踏み出してください。


確定申告の解説

確定申告とは

確定申告(かくていしんこく)とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得と、それにかかる所得税額を自分で計算し、税務署に申告する手続きのことです。会社員の場合は勤務先が年末調整をしてくれるため、給与所得については自分で申告する必要はありません。しかし、副業として個人事業を営んでいる方や、一定以上の副収入がある場合は、別途確定申告が必要になります。

申告の必要性

  • 副業の所得が年間20万円を超える場合
    給与所得とは別に、副業による所得(売上から経費を差し引いた利益)が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。逆に言えば、20万円以下であれば申告不要となるケースもありますが、将来的に事業を拡大していくことを考えると、きちんと申告の流れを理解しておくことをおすすめします。
  • 還付金を受け取るケース
    所得の計算結果によっては、所得税や住民税がすでに源泉徴収されすぎていたり、経費の計上により課税所得が下がったりして、還付金が受け取れる可能性があります。医療費控除や社会保険料控除など、さまざまな控除制度もあるため、積極的に情報収集しておくとよいでしょう。

青色申告と白色申告

個人事業主の確定申告には、主に「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。

  • 青色申告
    一定の帳簿付けや申請が必要ですが、最大65万円の控除が受けられるなどのメリットがあります。また、赤字が出た際に、その損失を3年間繰り越せるなど、税制面で優遇を受けられるのが特徴です。
  • 白色申告
    帳簿の要件はやや緩やかですが、青色申告のような特典・控除が少なく、最終的な税負担は高めになる傾向があります。将来的に事業を拡大する予定がある方は、青色申告にチャレンジしてみるとよいでしょう。

記載が必要な情報

1. 売上・収入に関する情報

  • 売上金額・収入日
    いつ、どのように受け取った売上なのかを明確に記録しておきます。ネット販売ならプラットフォームの売上管理画面、コンサルやサービス提供なら契約書や請求書を確認するなどして、正確に把握しましょう。
  • 振込手数料の扱い
    フリマアプリや決済サービスを利用している場合、振込手数料が発生することがあります。これは経費として計上できますので、しっかり記録を取ってください。

2. 経費に関する情報

  • 仕入れ・外注費
    商品を仕入れたり、業務を外注した場合の費用は経費となります。仕入れ伝票や請求書、支払明細などをきちんと保管し、いつ、いくら支払ったのかを管理しておきましょう。
  • 通信費や交通費
    事業に関連する電話代やインターネット費用、打ち合わせやイベント参加の交通費などは経費に含められます。ただし、プライベートとの共通利用がある場合は、使用割合などを考慮して合理的に按分(あんぶん)する必要があります。
  • 消耗品費・接待交際費
    パソコンや事務用品など、事業に必要な物品も経費にできます。取引先との打ち合わせ時の飲食費などは接待交際費に分類できますが、上限や制限がありますので注意が必要です。

3. 各種控除

  • 社会保険料控除
    国民健康保険や国民年金の保険料などは、控除の対象になります。支払証明書や領収書を保管しておきましょう。
  • 生命保険料控除、地震保険料控除
    個人事業の経費ではありませんが、個人として支払っている保険料は所得控除に関わる場合がありますので、必要であれば申告します。
  • 医療費控除
    事業経費とは別ですが、一年間の医療費が一定額を超える場合は医療費控除が適用され、還付金を受け取れる可能性が高まります。

申告書の作成方法

1. 手書き・税務署での提出

税務署に行けば、申告書の用紙をもらうことができます。自分で用紙に記入して提出する方法です。初心者にはややハードルが高いかもしれませんが、税務署の職員に質問しながら進められるメリットがあります。

2. e-Tax(電子申告)

国税庁が提供しているe-Tax(イータックス)を使えば、パソコンからオンラインで申告書を作成・提出できます。メリットとしては、還付金の受け取りがスピーディになる可能性があること、24時間いつでも申告手続きができることなどが挙げられます。

  • 必要なもの
    • マイナンバーカード(電子証明書付き)
    • ICカードリーダー or スマートフォン対応
    • e-Taxソフトまたは国税庁のウェブサイト

3. 会計ソフトを活用

「弥生会計」や「freee(フリー)」「マネーフォワード クラウド」などの会計ソフトを使うと、日頃の取引データを管理しておくだけで、自動的に帳簿を作成してくれます。ソフトに入力した内容がそのまま申告書に反映されるため、作業効率が高く、ミスも少なくなります。

  • レシートや領収書の管理がラク
    • スマホで領収書を撮影して取り込むことで、自動的に仕訳が提案される機能もあります。
  • 初心者でも操作しやすいUI
    • 専門知識がなくても、ナビゲーションに従って入力すれば申告書が完成するケースが多いです。

外注した場合の費用

「自分で確定申告をするのは大変そう…」という方は、税理士や会計事務所に外注するという方法もあります。費用の相場は業務範囲や地域によっても変わりますが、以下のようなイメージです。

  1. 税理士に依頼する場合

    • 相場: 月額顧問料で1万~3万円程度が一般的。決算申告時の費用は数万円~十数万円になる場合もあります。
    • メリット: 専門家ならではの的確なアドバイスを受けられ、税務調査が入ったときの対応も任せられる。
    • デメリット: 費用がかかるため、事業が小規模のうちは負担が大きく感じられる可能性があります。
  2. オンライン税理士サービスの活用

    • 相場: 月額5,000円~1万円程度のプランがあるところも。
    • メリット: 対面なしでもチャットやオンライン面談で相談できる。
    • デメリット: 場合によっては対応スピードやサポート範囲に限度がある。
  3. 会計ソフト+スポット相談

    • 相場: ソフト利用料(月額数千円)+必要なときのみ税理士などに単発相談(数千円~)
    • メリット: 基本は自分で安価に管理しつつ、わからない部分だけプロに聞けるためコストを抑えやすい。
    • デメリット: ある程度の会計知識やソフトの操作が求められる。

よくある失敗例と成功のポイント

失敗例1:領収書やレシートを紛失してしまう

  • 原因: 事業用とプライベートの支払いを混在させてしまい、管理が煩雑になる。
  • 対策: 事業専用の口座やクレジットカードを用意し、取引を一本化する。月ごと・週ごとなど、定期的にレシートの写真を会計ソフトに取り込み、ファイルで保管する。

失敗例2:申告期限をうっかり過ぎてしまう

  • 原因: 本業が忙しく、作業に取りかかるのがギリギリになってしまう。
  • 対策: 確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日(休日の場合は翌日)までと決まっています。1月~2月上旬までに帳簿を整理し、余裕を持って準備を始めましょう。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が発生する可能性があります。

失敗例3:経費の仕訳が適当で、指摘を受ける

  • 原因: 経費科目が曖昧で、税務署から「本当に事業に必要な支出ですか?」と疑われる場合がある。
  • 対策: 会計ソフトや税理士の指示に従い、正しく科目を分ける。事業関連の支出である証拠(契約書・写真・メールなど)を保存しておくとスムーズです。

成功のポイント

  1. こまめな記帳・データ入力
    日々の売上や経費を放置しておくと、申告直前にまとめるのは非常に大変です。週に1度、または月に1度など定期的に記帳しましょう。
  2. 青色申告にチャレンジしてみる
    帳簿の管理が少し難しく感じるかもしれませんが、節税メリットは大きいです。会計ソフトを使えば知識ゼロからでも学びやすいでしょう。
  3. プロの力を借りるタイミングを見極める
    ある程度利益が出るようになったら、必要に応じて税理士や会計事務所に相談するのも選択肢です。自分の時間と労力のコストを考え、外注のメリットを活用しましょう。
  4. 還付金のチャンスを逃さない
    還付金が出る可能性のある控除(医療費控除や社会保険料控除など)や経費を漏れなく計上するように心がけましょう。

まとめ:チェックリスト&次のアクション

ここまで、個人事業の確定申告について一通り解説してきました。初めての起業・副業起業だとハードルが高く感じるかもしれませんが、毎年決まったスケジュールで行われる行事でもあります。最初にしっかりポイントを押さえておくと、次年度以降はスムーズに進められるでしょう。

チェックリスト

  • 事業専用の口座やクレジットカードを用意:経費管理をスムーズにする
  • レシートや領収書を定期的に整理・取り込み:日々または週単位で管理
  • 会計ソフトやe-Taxの利用方法を調べる:効率化&ミス防止
  • 申告期限を確認:毎年2月16日~3月15日の期間を見据えて早めに準備
  • 青色申告への切り替えを検討:節税効果や損失繰越のメリットを得る
  • 税理士や専門家への相談も視野に:必要に応じて外注やスポット相談を活用

行動を起こしましょう

  1. まずは1か月分の売上・経費を記録してみる
    「今の自分の事業規模だとどれくらいの利益が出ているのか?」を明確にするだけでも、モチベーションが上がります。
  2. 会計ソフトの無料体験を試す
    無料期間が設けられているサービスもあるので、実際の操作感を試すと、確定申告へのハードルが下がるはずです。
  3. 税務署の無料相談会に参加する
    確定申告の時期には各地の税務署や商工会議所などで無料相談を行っている場合があります。初心者ほど、こうした機会をフル活用しましょう。

確定申告は「ややこしそう」と思われがちですが、事業を継続的に成長させていくためには必ず通るプロセスです。むしろ、このプロセスを通して自分のビジネスの収支を把握し、コストの見直しや新たな売上施策のヒントが得られるかもしれません。ぜひ、早めに着手して、還付金が出るときはしっかり受け取り、効率的なキャッシュフローを築いていきましょう。

次のステップ

  • 事業用口座やカードがなければ、早めに開設を検討する
  • 会計ソフトやe-Taxの公式サイトをチェックして使い方を把握する
  • 税務署の窓口や商工会議所のセミナー、オンライン税理士サービスもリサーチする

上記の手順を踏みながら、まずは小さくても確実に進めていきましょう。確定申告の仕組みをしっかり理解しておけば、今後はより規模を拡大して事業を展開するときにも必ず役立ちます。焦らず、でもコツコツと、はじめの一歩を踏み出してみてください。

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