「人を雇うのが怖い」「求人を出しても応募が来ない」。店舗経営において最も深刻なリスクとなっているのが「人」の問題です。最低賃金の上昇と少子化による採用難は、今後も解消される見込みがありません。
そんな中、あえて規模を追わず、自分一人、あるいは夫婦やパートナーとの最小人数で運営する「マイクロビジネス(小規模創業)」が注目を集めています。
かつて、ワンオペ(一人営業)といえば「ブラック」「過酷」というネガティブなイメージがありました。しかし現在は、DX(デジタルツール)の進化により、一人でも無理なく高収益を上げるモデルが可能になっています。
この記事では、創業支援の視点から、今の時代に最も合理的とされる「小さく始めて大きく稼ぐ」ための店舗戦略と、成功の鉄則について解説します。
なぜ今、「大規模店」より「超・小規模店」が強いのか
固定費の削減が「生存率」に直結する
店舗経営において、売上は水物(みずもの)ですが、経費は確実に発生します。中でも「人件費」と「家賃」は二大固定費です。 スタッフを雇えば、教育コスト、シフト管理のストレス、そして社会保険料の負担が発生します。逆に言えば、ここをゼロ(自分自身の生活費のみ)にできれば、損益分岐点は劇的に下がります。
月に300万円売り上げても経費が290万円かかる店より、月に80万円の売上で経費が30万円で済む店の方が、手元に残るお金(利益)も精神的な余裕も大きくなります。不景気に強いのは、圧倒的に後者です。
意思決定のスピードが最大の武器
大手チェーン店が新メニューを一つ出すのに会議や決裁で数ヶ月かける間に、個人店なら「今日の市場で良い食材があったから」という理由で、その日の夜に新メニューを提供できます。 顧客のニーズに合わせて、営業時間や価格、サービス内容を即座に変えられる「小回りの良さ」こそが、変化の激しい現代における最強の武器となります。
ワンオペ店舗でも「疲弊せず稼ぐ」ための5つの鉄則
一人で店を回す場合、最大の敵は「店主の過労」です。体が資本である以上、無理な働き方は続きません。長く続けるためには、以下の5つの鉄則を守る必要があります。
1. 「何でも屋」を捨てて「専門店」にする
一人で多くのメニューに対応するのは不可能です。食材ロスも増え、提供スピードも落ちます。 「カフェ」ではなく「スコーン専門店」、「居酒屋」ではなく「貝料理専門店」のように、商材を絞り込みましょう。
専門店化することで、オペレーションが単純化されるだけでなく、「〇〇といえばあの店」という認知がされやすくなり、遠方からの目的来店(指名客)を獲得しやすくなります。
2. DXで「接客」と「作業」を分離する
「注文を聞く」「会計をする」という作業は、今は人間がやらなくても良い時代です。 券売機やモバイルオーダー(QRコード注文)、セルフレジを導入することで、店主は「調理」や「付加価値の高いサービス」に集中できます。
初期投資はかかりますが、「IT導入補助金」などを活用すれば負担を抑えられます。アルバイトを一人雇い続けるコストに比べれば、システム利用料の方が遥かに安価です。
3. 薄利多売を捨てて「高単価」を狙う
席数や生産能力に限りがある小規模店で、大手チェーン店と同じ価格帯で勝負をしてはいけません。「安くて良いもの」ではなく、「高くても欲しいもの」を提供する必要があります。
そのためには、空間デザインにこだわる、希少な材料を使う、完全予約制にするなど、価格に見合う「体験価値」を作ることが重要です。客数を追うのではなく、客単価を上げて、少ない人数で売上を作るモデルを目指しましょう。
4. 営業日・営業時間を「自分都合」で決める
「お客様のために年中無休」という考え方は捨ててください。一人で長く続けるためには、しっかりと休みを取ることが不可欠です。
例えば、「週4日営業で、残り3日は仕込みと休養」といったスタイルでも、利益が出るような価格設定と収支計画を立てることが、真の事業計画です。定休日が明確であれば、顧客もそれに合わせて来店してくれます。
5. Web集客に一点集中する
小規模店には、大々的な広告予算はありません。しかし、Googleマップ(MEO対策)とInstagramなどのSNSは無料で使えます。 特にGoogleビジネスプロフィール(Googleマップの情報)は重要です。多くのユーザーは「近くの〇〇」で検索します。ここで魅力的な写真と正しい情報を発信し続けるだけで、広告費ゼロで集客することが可能です。
おすすめの「小規模・一人開業」業種アイデア
テイクアウト・デリバリー専門店
店内に客席を設けないため、10坪以下の狭い物件でも開業可能です。家賃を抑えられ、接客の手間も最小限で済みます。 (例:カヌレ専門店、高級おにぎり店、サラダボウル専門店など)
プライベートサロン・ジム
「個室」「貸切」を売りにしたサービス業です。大手のような会員数は見込めませんが、一人あたりの単価を高く設定できます。予約管理システムを使えば、電話対応に追われることもありません。 (例:ヘッドスパ専門店、パーソナルジム、個室サウナなど)
教室・コンサルタント業
在庫を持たず、自分の「知識」や「スキル」を売るビジネスです。自宅やオンラインでも始められるため、初期投資がほぼゼロです。 (例:料理教室、Webマーケティング支援、オンラインカウンセリングなど)
小さな店こそ「事業計画」でコンセプトを尖らせよう
「小さく始める」ことは「適当に始める」ことではありません。リソースが限られているからこそ、誰に、何を、どうやって売るかという「コンセプト」を明確にする必要があります。
なんとなく始めた店は、なんとなく淘汰されていきます。一方で、ターゲットを絞り込み、無理のないオペレーションを設計した店は、不況下でも驚くほど高い利益率を叩き出しています。
自分のアイデアが「独りよがり」になっていないか確認するためにも、起業前には必ず商工会議所や金融機関、専門家に事業計画書を見てもらいましょう。客観的な意見を取り入れることが、成功への第一歩です。
時代は「規模」から「質」へシフトしています。あなたらしい、小さくて強いビジネスを作ってください。
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